かつて、広大な大陸を治めた王様がいた。
広い広い大陸の中心に立派な城を構え、大陸の隅々まで名を轟かせた。
王様の治世はとても素晴らしく、誰も彼もが彼を慕い、国は大いに栄えた。
王様には三つ子の王子がいた。各々その名に恥じない立派な王子だった。
一人は大陸の北を、もう一人は西を、最後の一人は東をそれぞれ治め、王様の声を届けた。
誰も彼もが幸福で、日々に不満などなかった。
ある日、大陸の真ん中に一筋の光が落ちた。
流星が王様の暮らす都を跡形もなく吹き飛ばした。
大陸はひび割れ、人々は未曾有の大災害に全てを奪われた。
何より、敬愛する王様の死に大陸中が悲嘆に暮れた。
幸福な日々は終わった。
そして、人々は荒れ果てた大地で少しずつ復興を始めた。
王子達は気丈にも民を纏め上げ、それぞれの地を癒していった。
都の跡地はいつしか湖となって、中心に小さな島が残った。
年月が経って人々が日常を取り戻し始めた頃、王子の一人が言った。
「再びこの大陸は一つになるべきだ」
この言葉が全ての過ち。
この言葉が大陸の運命を決めてしまった。
民はそれぞれを導いた王子を担ぎ上げ、「王になるべきは彼だ」と声高に叫んだ。
大陸は三つに分たれ、もはや一つになることはない。
環状大陸
かつては円盤状の大陸だったが、流星の墜落によって中心に大穴が開き環状となった。
三人の統治者が各地方を治め、北は君主国、西は帝国、東は皇国と呼ばれる。
流星の影響による地殻変動で発生した崖や川、山が国境となっている。
統治者の一族は「王の血脈」と呼ばれ、畏怖と敬意の象徴として絶対的な権力を持つ。
なお物語が始まった時点で、帝国はとある事件により崩壊してしまっている。
練命術
大陸に古くから伝わる伝承の一つであり、かつての王様が大陸を治めた力の一つ。
古くは雨乞いや吉凶占い程度のものだったが、近年になって学問として開拓されつつある。
「練命術」という言葉もまだ普及しておらず、「奇跡」や「御業」と呼ぶ人も多い。
行使には多量の「オーラ」を必要とし、才のある限られた人間にしか扱えない。
晶石獣
大陸に大穴を開けた流星が発するエネルギーに影響を受けた生物の総称。
世代を経て急激に進化を遂げており、人々の脅威となっている。
共通の特徴として身体の一部、あるいは大部分が結晶体となっている。
突然変異個体やリーダー個体、長命個体など、特別な晶石獣も存在する。
ドール
皇国の練命術研究の産物であり、現在の大陸で最も強いと噂される存在。
強靭な身体と凄まじい膂力を備えており、治癒能力も高く不老。
膨大な量の「オーラ」を蓄える器官を持ち、強力な練命術を各々が扱える。
とある理由からドールは女性しか存在せず、「魔女」や「人形」とも呼ばれる。
現在その数は推定でも十数人と言われており、生ける伝説となっている。